仕組み債の構造

仕組み債とは、ある「仕組み」を持った債券のことを言います。
「仕組み」とは、デリバティブ(金融派生商品)を利用し、利子や満期、償還金、通貨などを投資家のニーズに合わせて設定した「仕組み」です。

デリバティブとは、スワップやオプションなどのことを言います。スワップとは、例えば変動金利と固定金利を交換する金利スワップ、ドルを円と交換する通貨スワップなどです。オプションとは、株などをあらかじめ約束した価格で、一か月後、一年後など将来に売ったり買ったりできる権利です。

デリバティブには条件が付与されます。
通貨では「為替相場が一定の幅にある限り」、株価では「日経平均がxx,xxxx円以上である限り」のような条件です。そのような条件のもとに金利が通常より高いなどの仕組みが組成されます。一定の幅を超えた、下限を下回った場合には、利子が出ない・減少する、元金が減少する、償還金の通貨が変わり円建てでの元本割れが生じるなど損失が発生する構造です。

デリバティブには、買手にスワップ料、オプション料等のコストがかかりますが、売手にはオプション料などが収入になります。そこで、通貨、株価などの相場が落ち着いて変動がなければ、売手には手数料が自動的に入ってきますので、これが売手の利益となります。例えば、平たく言うと、金利が通常よりも高い仕組み債は、債券の保有者がデリバティブの売手になっており、オプション料などが金利に上乗せされている債券です。ところが、相場が激しく変動すると上述のように損失が発生する債券でもあります。仕組み債に手を出すと、デリバティブのような難解なものに手を出していないつもりでも実際には手を出しまうことになります。

では、デリバティブの買手は、どのようなポジションなのでしょうか。買手は、通貨、株価などの相場が落ち着いて変動がなければ、コストだけ負担して損をしてしまいます。しかし、仕組み債におけるデリバティブの買手は、大手の取引業者、金融機関、ファンドなどであり、いろいろなデリバティブの売手にもなって買手のコストを相殺【ヘッジ】しかつ利益を出すように行動しています。

仕組み債は、相場が安定していれば、現状からみて損失が発生する可能性が低く、金利が通常よりも高いなどメリットのあるように見える債券ですが、リスクが大きい債券であり、投資する人は、時には大きな損失を被る可能性があることを認識した上で投資し、相場の変動の兆候があった時に直ぐに処分する態勢を取っておく必要があります。

また、仕組み債は、一般的な債券のリスク(①信用リスク②価格変動リスク③為替変動リスク④流動性リスク)のうち④の流動性リスクに特に注意が必要です。
仕組み債は、クローズドエンド型の商品として基本的に中途解約することができない商品もあり、投資に際しては解約の是非、その価格について販売会社に十分確認することをお勧めします。

2016年12月13日 | カテゴリー : 資産運用 | 投稿者 : ファインRアドバイザー

なぜ円高になるの?その対応は?

日銀の異次元金融緩和、マイナス金利導入にもかかわらず、最近はUDドルは100円近辺を維持していますが、さらに100円を切って90円台になる可能性もあるとの報道がなされています。

日本は、1000兆円を超える政府債務があるにも関わらす、他の債務国のように通貨が安くならないだけでなく、通貨が高く円高になっています。債務のほとんどが銀行等の日本国内の債権者からの債務であること、最近は経常収支が黒字であること、経済的・政治的に安定していること、米国がドル高を警戒していること等によるといわれています。

しかし、現在の日本の成長は微々たるものでGDPはほぼ横這いである、また少子化により経済規模は縮小する可能性がある、経常収支の黒字も原油安が原因でありそれが何年も継続するかどうかわからない、債務=借金を返せる状態ではない(GDPの200%超)等を考えると長期的には円は安くならざるを得ないと考えられます。
また、借金を返すには、インフレにより通貨の価値を減少させ実質的に借金を目減りさせなければならないとするとその面からも円の価値は減少せざるを得ません。(日本の終戦後、戦時の莫大な債務を強烈なインフレで実質的に減少させた過去の事例を忘れてはいけません。)

すると、円高は一時的なものでしかないはずですが、通貨の交換である為替は政治経済的思惑、投機の対象であり、経済の基礎的条件と乖離して動く場合もあるため、これからも円は高下を繰り返すことになるでしょう。

ただ、数十年という期間でとらえると、日本では、ブラジルの様にインフレとなり円の価値が減少していく可能性が高いことを念頭に置いておく必要があります。

そこで、何年もかけて外貨と円とがバランスをとれるように資産構成をしておくことが重要です。仮に50%ずつなら交換価値が変動してもフラットになります。人口が増加する見込みがある、将来の成長が期待できる、資源がある、世界的で最も流通している通貨を持っている、国力、国富がある等を考慮すると外貨はUSドルがお薦めです。
一方、ユーロもUSドルに次ぐ通貨ですが、移民、債務、離脱等によりEUの今後の継続・成行きにも不安があります。リスク分散の効果を狙うのも1つの方法ですが、リスクヘッジできるかどうかはわかりません。

いずれにしても、経済がグローバル化している現在、円という一国の通貨のみで資産を保有することにはリスクがあることを認識しておくことが重要です。