相続税対策のアパート賃貸経営のリスク

所有する土地に建物を建て賃貸すると土地および建物の評価額が下がり、相続時に発生する相続税が減少するため、アパート賃貸経営が相続税節税策として2015年度相続税の増税(基礎控除額の引下げ等)を契機に増加しています。
確かに、相続税は大幅に減少しますので、メリットは否定できません。しかし、、素人が簡単に手を出すと失敗する可能性があります。不動産のプロならば、アパート賃貸経営によりリスクを念頭に置きながら収益を確保することができるかもしれません。賃貸経営は、賃貸市場動向、物件の立地、投資と収益性のバランス、集客、空き室リスク、費用、修繕維持等を考慮しながら長期間かけて収益確保、投資回収を行うものです。また、事業としては、1~2物件をある特定の時期に始めるのではなく、時間をかけて少しづつ物件を増やし、それらを総合的に管理することによってリスクを分散しているわけです。

ところが、個人のアパート賃貸経営では、対象物件は、現在所有する物件だったり、仮に新たに取得する物件だったとしても現状の収益性のみを考慮した物件だったりすると、立地、集客、賃料水準、空き室リスク等の検討が不十分なため、最終的に収益確保、投資回収ができない場合が出てきます。最悪なのは、不動産を手放しても、借入金を返済できず借金だけ残ってしまうことです。くれぐれも、そうならないように、アパートの建築・改築資金等の投資の回収ができるかどうかを優先してアパート賃貸経営の是非を検討しなければなりません。

現在、日銀の異次元緩和により世の中にお金が溢れている中で、金融機関、建設業者、不動産業者が相続対策として売込みをかけており、容易く借入でアパート建築ができてしまいますので、注意が必要です。
また、業者の中には、全期間借上げ方式の契約を薦める例もありますが、業者のリスクヘッジのため賃料を安く設定したり、空き室がでたらさらに賃料を下げる、入居率減少に応じて賃料を引下げる等の契約条項、見直し条項があるケースが多いので、その際は空き室リスクは個人所有者が負担することになります。
加えて、日本は少子化による人口減で住宅は余ってきますし、地方から都市への人口移動により地方はますます過疎化してきます。東京の一等地は別にして都市近郊でも例外ではありません。空き家、空き室がどんどん増えていく中でのアパート賃貸経営は、ますます難しくなってきます。

以上のことから、アパート賃貸経営は、相続税対策ではなく、純粋に事業として成り立つかどうか十分シュミレーション等により検討を行った上で実行するする必要があると思います。