日本の長期金利上昇の兆候に注意(住宅ローン)

2016年の年末に三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行が10年固定の住宅ローン金利を、2017年1月から0.05%引き上げることを発表しました。また、2017年の年初に住宅金融支援機構がフラット35の適用金利を1月から0.02%引き上げることも発表しました。ここ数年金利低下が続いてきた中で、若干ですが久しぶりに金利が上がることになります。

日銀が、国債等を買入れる方式の量的緩和、マイナス金利導入による質的緩和を押し進める中で、短期金利は誘導できても、民間主導の長期金利は抑えきれず、住宅ローンの長期金利が上がり始めました。

これは、米国の短期金利、および長期金利の上昇の影響があります。米国は今後数度の利上げを行う予定なので、日本の金利もそれに応じて上昇するものと思われますが、一時的にはドル高是正、リスク回避、円高による金利低下があるものの、金利上昇のトレンドが続くのではないかと思います。

日本の量的緩和の規模が限界に近づいてきており、マイナス金利もその深堀りには抵抗があります。強引にマイナス金利を拡大したとしても、従来のように長期金利を低めに維持・誘導できるかどうかはわかりません。

つまり、今後、長期金利は、一時的に低下することはあるものの、上昇していくものと思われますので、住宅ローンで短期金利、10年固定型長期金利選択型を適用している人は、金利動向に注意を払い、長期金利が跳ね上がる前にその切り替えを検討した方が良いのではないかと思います。

 

2017年1月2日 | カテゴリー : 経済, 財産管理 | 投稿者 : ファインRアドバイザー

日本の国富は真実か

内閣府の国民経済計算確報(2016年1月15日)によると、日本の国富は国全体の正味財産(民間・政府合計の貸借対照表における純資産=資産から負債を控除したネットの財産に当たるもの)で金額は3109兆円になるとのことです。国の借金1000兆円を含む債務を控除後の数値です。

これを聞くと日本には相当の財産があるものと考えがちですが、実はいくつかの盲点があるのです。

①純資産から年金債務が控除されていなことです。
②政府分を抜き出してみると、純資産がマイナス13兆円の債務超過となっていることです。

①純資産から年金債務が控除されていないこと。

2016年12月19日の日本経済新聞の記事に「年金債務が2030年・約1262兆円になる」との試算が出ていましたが、ここでは2014年・約1000兆円と推定し計算します。この1000兆円は、国の国債等の借金1000兆円とは別の債務で、合計すると約2000兆円になります。きわめて衝撃的な金額です。

日経新聞の試算過程を推定しますと2014ベースで保険料支払済みの受給権者(25年以上の加入実績がある人)33百万人、一人当たり月給付額14万円、65歳から85歳までの給付期間20年=240月で、年金給付総額は1108兆円となり、そこから積立金160兆円を差引くと約1000兆円となります。

例えれば英会話スクールでの前払い授業料を授業という給付を受ける債務の価値として評価するものです。国際的に適用されている会計基準では、こうした受給権は、給付総額を優良債権(例えば国債)の利率により20年間で割り引いた現在価値で債務として評価するのですが、現在の国債の利率は、ほぼゼロに近いので、給付総額≒債務となり、債務は約1000兆となります。

国際会計基準によれば、保険料は支払済みであり受給権が派生しているので、隠れ債務に当たります。国の制度としては、積立方式ではなく、賦課方式(=現役世代の保険料で、退職世代の年金を賄う単年度収支方式)を採っているため、計上していないのです。

この年金債務を控除すると国富が1/3も減少します。

②政府分を抜き出してみると、純資産ががマイナス13兆円(2014年度)の債務超過となっていること。

政府の借金(主に国債)1000兆円の債務を控除した後の数値で、13兆円の債務超過となっていますが、これに上記の年金債務1000兆円を加えると1013兆円の債務超過となります。但し、その借金の大部分は日本国内から借り入れていますので今のところ他国から債務削減を要求されずにいます。つまり日本の民間の財産を頼りに政府が借金をしている構造です。

一方、ギリシャ等の重債務国は、他のユーロ諸国から借金をしていることが原因で、緊縮財政策の実行を余儀なくされています。

日本の政府の債務は膨大であり、このまま増え続ける国債が日本国内で消化できず外国に引き受けてもらう、いわゆる外国から借金をする構造に陥るとギリシャの様な緊縮財政策を採らなければならなくなります。すると国の信頼性が揺らぎ、通貨の価値が減少、為替が暴落(円安)、輸入物価が高騰し、インフレとなります。(なお、ギリシャの通貨はユーロなので為替が暴落しないで済んでいます。)

また、国債が日本の民間で消化できずに日銀に引き受けてもらう、いわゆるヘリコプターマネーによる財政フィナンスが行われるとインフレに陥ることになります。つまり国が紙幣をばらまくことで紙幣の信頼性が揺らぎ、通貨の価値が減少、為替が暴落(円安)、輸入物価が高騰し、インフレとなります。
注①ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターからお金をばらまくように市中にお金を大量に供給し、そのお金を使ってもらうことで景気を刺激する政策ですが、激しいインフレを引きおこす可能性があります。
注②政府(国)が発行した国債を日銀(国)が直接引き受けることで政府(国)が資金を調達することです。

加えて、インフレなのに経済が停滞するスタグフレーションになることもあります。

日本の歳入と歳出の基礎的収支(プライマリーバランス)は毎年赤字で国債を30~40兆円発行し借金1000兆円は増え続けている、日銀が国債を毎年80兆円購入し日銀保有残高は2016年12月で400兆に、2年後には600兆円になりそう等、異常な状況が続いています。

また、少子高齢化等経済成長の足かせとなる構造に対応する対策がとられていない状況です。

このような中で、日本は重債務国の道をひた走っており、将来の国情は非常に厳しいものになるでしょう。

日本の国富は相当の額があるように見えますが、過去日本が高度成長時代に蓄えたものであり、債務が急激に拡大する中で、財産も急激に減っていくのではないかと思います。それを取り崩すだけでは、将来はありません。

日本のこうした状況から脱却し未来へ向けて発進するためには、歳入と歳入の収支の黒字化、年金制度改革その他の構造改革をしっかり推し進めていかなければならないのではないでしょうか。

 

2016年12月30日 | カテゴリー : 経済, 年金 | 投稿者 : ファインRアドバイザー

日銀の財務悪化に対する懸念

日本経済新聞に先月、今月と連続で日銀の財務状況の悪化の記事が出ていました。
第1は買入れた国債の含み損、第2はその国債の利息収入の悪化です。
原因は共にマイナス金利、金融緩和です。

国債の含み損
含み損は国債の買入れ価格と額面との差で、長期金利の低下により国債価格が上昇し金融機関から買い入れる国債が額面を上回り発生します。満期が来て償還されると額面との差額が実現損となります。日銀は、安倍政権誕生後、黒田総裁が就任し、年間80兆円もの国債を買い集めており国債の残高は2016年度末で400兆円超(国債発行残高の1/3)ですが、その国債の含み損が10月末で9.3兆円にもなっています。2013年年4月末金融緩和開始から約8兆円も増えました。

国債の利息収入の悪化
上記の含み損は、会計上満期が来るまでの期間で分割して計上し、利息収入と相殺後、ネットの損益を計上しますが、分割損失計上額(=利息調整額という)が少なかった金融緩和初期には、利息収支は増加傾向にあったものの徐々に頭打ちとなりその後減少に転じています。今後、利回りの高い国債が償還期を迎え利回りゼロや含み損の国債が増えていくと利息収支はどんどん悪化していきます。2018年には利息収支が赤字になる可能性が高いとの専門家の予想も出ています。(国際基準である企業会計では、時価会計が原則であり、時価のある金融商品は含み損を期末に評価損として計上しなければならないのに、日銀が一括して損失を計上しないのはは不思議でしかありません。)

このように、日銀の財務が悪化すると
国への納付金が減り国の財政悪化に結び付く、
国の支援を受ければ金融政策の独立性が揺らぐ
通貨の信認が揺らぎ円安になる(経済成長に結びつく良い円安ではなく、通貨の信用がなくなる悪い円安、例ブラジル、アルゼンチン)
ことになります。
さらに、こうしたことにより、物価の上昇、インフレ、金利の高騰を招く可能性も否定できません。日銀の国債の価値が減少して含み損が拡大し利息収支も悪化する、金利が高騰すると経済が悪化する、経済が停滞するも物価が上昇するスタグフレーションになる等の負の連鎖が起きるとも限りません。

今まで、マイナス金利を含む量的質的金融緩和のコスト(悪い影響)が隠されていましたが、上記のような兆候を契機にして、アベノミクスの3本の矢(財政政策、金融政策、成長戦略)のうち金融政策の結果を数値で検証する時期に来ていると思います。

 

2016年12月9日 | カテゴリー : 経済 | 投稿者 : ファインRアドバイザー

トランプショックの日本への影響

米国の大統領にトランプ氏が決まり世界中が驚くと同時に、新しい米国政府に採用されると思われる政策を先取りして、世界中の株価、為替、金利等が大きく変動しています。実際にトランプ大統領が就任して諸政策が実行されるまでは、どのような影響があるかわかりませんが、トランプ氏の積極的なの経済政策に期待して、米国、日本では株高、円安ドル高が進展し、経済的プラス要因と期待されています。一方、新興国では通貨安の進行により資金が米国に還流し始め、経済的マイナス要因として危惧されています。
日本にとっては、円安による輸出増、企業利益の増加の期待があるものの、気になる点が長期金利の上昇です。米国では財政赤字の拡大、インフレの予想により長期金利が(短期金利より先に)上昇し、また日本においても低金利政策にもかかわらず長期金利が(短期金利より先に)少しづつですが上昇しています。海外金利が上がると日本の金利も上がるという金利選好理論と同じ結果となっています。
金利の中で短期金利は中央銀行の様々なオペレーションで目標値に収めるように誘導されていますが、長期金利は主に経済環境、市場取引に委ねられることが多いので、急激に変動する可能性があります。
長期金利が上がると、長期資金(企業の投資資金の借入れ、住宅ローン等)の金利増加により、経済活動に悪い影響が出てきます。
経済活動が順調に成長しているときにインフレとなり、それに従って短期・長期の金利が上がるのは良い経済循環ですが、長期の金利が上昇(後に短期金利が上昇)、物価が上昇するけれども経済が停滞し収入が延びない悪い経済状況(スタグフレーション)になる可能性もあります。日本も90年度以降、バブルの崩壊でスタグフレーションになりました。
現在の日本では、日銀による金融緩和政策で短期金利はマイナス金利、長期金利ははゼロ金利に誘導されていますが、金融緩和を何年か後には止めざるを得ない、つまり金利を上げていかなければならないので、将来金利は上がるものと考えておくべきでしょう。
米国においては、良い経済発展を期待されて株価が延びていますがトランプ大統領の政策を見守るしかありません。
一方、日本においては、円安ドル高で輸出が伸び経済が成長する要素もありますが、2013年から2015年にアベノミクスで円安、輸出増があったものの経済成長(GDP)率は今一つであった過去の結果、また、円安、輸出増があったとしても少子高齢化、海外生産移転による国内産業空洞化、規制改革の遅れ等の経済基盤の弱体化を考慮すると日本経済の成長は楽観を許しません。
政府の経済政策の3本の矢(金融政策、財政政策、規制緩和等の成長戦略)のうち、実行が遅れている規制緩和、構造改革を進め日本経済の再生・成長を成功させることが望まれますが、現段階で進んでいないことを考えると、すぐには起こらないものの、上記のスタグフレーションに対するリスク対策を考えておくことも必要となります。
ところで、全体的な経済問題はさておき、身近なところでは、どのような影響が出るでしょうか。スタグフレーションにおいては、収入はそのまま物価、金利だけ上がる訳ですから、普段の生活が苦しくなるとともに、長期借入金、住宅ローン等の長期資金はその返済に苦慮する場面も出てくると思われます。とくに日本では持ち家志向が強く住宅ローンを抱えている人が多いので、今後、変動金利、一定期間固定金利選択型変動金利で契約している人は、金利動向を綿密にチェックし、金利が上昇する前に繰り上げ返済、または固定金利に切り替えられるよう準備をしておくことが必要となります。
また、債券で運用している人は、金利上昇により債券価格が下落し含み損失が発生します。満期まで保有していれば、実質価値は減少しますが元本割れにはなりません。しかし途中換金が必要となれるば、元本割れが生じ実現損が発生しますので注意が必要です。今後、債券投資は、期間の長いものを避け期間の短いものにシフトすることを検討することが大切になってきています。

2016年11月24日 | カテゴリー : 経済, 不動産 | 投稿者 : ファインRアドバイザー

なぜ円高になるの?その対応は?

日銀の異次元金融緩和、マイナス金利導入にもかかわらず、最近はUDドルは100円近辺を維持していますが、さらに100円を切って90円台になる可能性もあるとの報道がなされています。

日本は、1000兆円を超える政府債務があるにも関わらす、他の債務国のように通貨が安くならないだけでなく、通貨が高く円高になっています。債務のほとんどが銀行等の日本国内の債権者からの債務であること、最近は経常収支が黒字であること、経済的・政治的に安定していること、米国がドル高を警戒していること等によるといわれています。

しかし、現在の日本の成長は微々たるものでGDPはほぼ横這いである、また少子化により経済規模は縮小する可能性がある、経常収支の黒字も原油安が原因でありそれが何年も継続するかどうかわからない、債務=借金を返せる状態ではない(GDPの200%超)等を考えると長期的には円は安くならざるを得ないと考えられます。
また、借金を返すには、インフレにより通貨の価値を減少させ実質的に借金を目減りさせなければならないとするとその面からも円の価値は減少せざるを得ません。(日本の終戦後、戦時の莫大な債務を強烈なインフレで実質的に減少させた過去の事例を忘れてはいけません。)

すると、円高は一時的なものでしかないはずですが、通貨の交換である為替は政治経済的思惑、投機の対象であり、経済の基礎的条件と乖離して動く場合もあるため、これからも円は高下を繰り返すことになるでしょう。

ただ、数十年という期間でとらえると、日本では、ブラジルの様にインフレとなり円の価値が減少していく可能性が高いことを念頭に置いておく必要があります。

そこで、何年もかけて外貨と円とがバランスをとれるように資産構成をしておくことが重要です。仮に50%ずつなら交換価値が変動してもフラットになります。人口が増加する見込みがある、将来の成長が期待できる、資源がある、世界的で最も流通している通貨を持っている、国力、国富がある等を考慮すると外貨はUSドルがお薦めです。
一方、ユーロもUSドルに次ぐ通貨ですが、移民、債務、離脱等によりEUの今後の継続・成行きにも不安があります。リスク分散の効果を狙うのも1つの方法ですが、リスクヘッジできるかどうかはわかりません。

いずれにしても、経済がグローバル化している現在、円という一国の通貨のみで資産を保有することにはリスクがあることを認識しておくことが重要です。

 

アベノミクスのリスク

最近、アベノミクス、それに伴う金融政策(金融緩和)、財政政策(財政出動)、規制緩和について、8月に日経新聞上に、経済学者等の意見が記事として多く載せられています。

そこには、ギリシャに見られたような金利上昇、財政破綻、物価高騰のリスク等が記載されていますが、紙面上の場所は5ページ以降(経済教室、コラム等)であり、普通の方々があまり見ないようなところです。

私の周りだけでなく国民の多くの方々は、そのリスクをあまり知りません。日本の未来を考えるときに果たしてこれでよいのでしょうか。経済政策については、識者の意見は様々ですが、リスクはきちんと認識した上で行動することが大切です。

リスクが大きければリターンはそれ以上に大きくなければ意味がありません。リターンである経済の拡大(見込)が上記のリスクを上回っているでしょうか。国土強靭化、地方創生等の予算の大盤振る舞いで国の借金は増大しリスクは拡大するばかりで、経済規模の指標であるGDPの拡大(見込)はほとんどありません。

こうした状況の中で、私たち国民は、将来非常に苦しい状況に陥る可能性が高くなっています。私たちは、自衛のために日本および世界の政治・社会・経済の大筋の流れのほか、金利、為替、株価、不動産価格、税制、社会保険制度などについて注意深く見守り、現在および将来における自らの収入、貯蓄、財産にどのような影響があるかを絶えず検証していくことが重要です。

 

 

 

 

 

2016年8月24日 | カテゴリー : 経済 | 投稿者 : ファインRアドバイザー