リート(REIT)のバブル・リスク

リート(REIT)は、Real Estate Investment Trustの略で、簡単に言うと不動産投資による受益権(稼いだ利益を享受できる権利)を小口化した、誰でも売買できる流通性のある(上場)権利証券です。
最近、不動産の価格が高止まりし、賃料収益が伸び悩んでいるところ、日銀が国債、ETF(exchange traded fund:株価指数連動型投資信託受益証券)と同様に市場から買入れをしていることから、価格が高止まりしています。

不動産物件のREITによる小口化・証券化による資金の流動化は、都心を中心に進められてきましたが、最近では地方都市にも飛び火し収益性の低下の中で案件が増加しバブル化してきています。

不動産バブル状況の中で、さらに日銀がREITを買支えている構造があります。今後、日銀のREITの買支えが減少または停止するとともに、東京オリンピックの終了、引続く建築需要の減少が不動産価格を押し下げることにより、不動産のバブルがはじけ、REIT価格は大幅に値下りする可能性もないとは言えません。
今後数年は、金融緩和の継続による日銀の買支えでREITは大幅な値下がりはしないと思いますが、段階的であるにせよ金融緩和の縮小を契機にREIT価格が値下りするリスクがあることは十分に認識しておくべきでしょう。

トランプショックの日本への影響

米国の大統領にトランプ氏が決まり世界中が驚くと同時に、新しい米国政府に採用されると思われる政策を先取りして、世界中の株価、為替、金利等が大きく変動しています。実際にトランプ大統領が就任して諸政策が実行されるまでは、どのような影響があるかわかりませんが、トランプ氏の積極的なの経済政策に期待して、米国、日本では株高、円安ドル高が進展し、経済的プラス要因と期待されています。一方、新興国では通貨安の進行により資金が米国に還流し始め、経済的マイナス要因として危惧されています。
日本にとっては、円安による輸出増、企業利益の増加の期待があるものの、気になる点が長期金利の上昇です。米国では財政赤字の拡大、インフレの予想により長期金利が(短期金利より先に)上昇し、また日本においても低金利政策にもかかわらず長期金利が(短期金利より先に)少しづつですが上昇しています。海外金利が上がると日本の金利も上がるという金利選好理論と同じ結果となっています。
金利の中で短期金利は中央銀行の様々なオペレーションで目標値に収めるように誘導されていますが、長期金利は主に経済環境、市場取引に委ねられることが多いので、急激に変動する可能性があります。
長期金利が上がると、長期資金(企業の投資資金の借入れ、住宅ローン等)の金利増加により、経済活動に悪い影響が出てきます。
経済活動が順調に成長しているときにインフレとなり、それに従って短期・長期の金利が上がるのは良い経済循環ですが、長期の金利が上昇(後に短期金利が上昇)、物価が上昇するけれども経済が停滞し収入が延びない悪い経済状況(スタグフレーション)になる可能性もあります。日本も90年度以降、バブルの崩壊でスタグフレーションになりました。
現在の日本では、日銀による金融緩和政策で短期金利はマイナス金利、長期金利ははゼロ金利に誘導されていますが、金融緩和を何年か後には止めざるを得ない、つまり金利を上げていかなければならないので、将来金利は上がるものと考えておくべきでしょう。
米国においては、良い経済発展を期待されて株価が延びていますがトランプ大統領の政策を見守るしかありません。
一方、日本においては、円安ドル高で輸出が伸び経済が成長する要素もありますが、2013年から2015年にアベノミクスで円安、輸出増があったものの経済成長(GDP)率は今一つであった過去の結果、また、円安、輸出増があったとしても少子高齢化、海外生産移転による国内産業空洞化、規制改革の遅れ等の経済基盤の弱体化を考慮すると日本経済の成長は楽観を許しません。
政府の経済政策の3本の矢(金融政策、財政政策、規制緩和等の成長戦略)のうち、実行が遅れている規制緩和、構造改革を進め日本経済の再生・成長を成功させることが望まれますが、現段階で進んでいないことを考えると、すぐには起こらないものの、上記のスタグフレーションに対するリスク対策を考えておくことも必要となります。
ところで、全体的な経済問題はさておき、身近なところでは、どのような影響が出るでしょうか。スタグフレーションにおいては、収入はそのまま物価、金利だけ上がる訳ですから、普段の生活が苦しくなるとともに、長期借入金、住宅ローン等の長期資金はその返済に苦慮する場面も出てくると思われます。とくに日本では持ち家志向が強く住宅ローンを抱えている人が多いので、今後、変動金利、一定期間固定金利選択型変動金利で契約している人は、金利動向を綿密にチェックし、金利が上昇する前に繰り上げ返済、または固定金利に切り替えられるよう準備をしておくことが必要となります。
また、債券で運用している人は、金利上昇により債券価格が下落し含み損失が発生します。満期まで保有していれば、実質価値は減少しますが元本割れにはなりません。しかし途中換金が必要となれるば、元本割れが生じ実現損が発生しますので注意が必要です。今後、債券投資は、期間の長いものを避け期間の短いものにシフトすることを検討することが大切になってきています。

2016年11月24日 | カテゴリー : 経済, 不動産 | 投稿者 : ファインRアドバイザー

相続税対策のアパート賃貸経営のリスク

所有する土地に建物を建て賃貸すると土地および建物の評価額が下がり、相続時に発生する相続税が減少するため、アパート賃貸経営が相続税節税策として2015年度相続税の増税(基礎控除額の引下げ等)を契機に増加しています。
確かに、相続税は大幅に減少しますので、メリットは否定できません。しかし、、素人が簡単に手を出すと失敗する可能性があります。不動産のプロならば、アパート賃貸経営によりリスクを念頭に置きながら収益を確保することができるかもしれません。賃貸経営は、賃貸市場動向、物件の立地、投資と収益性のバランス、集客、空き室リスク、費用、修繕維持等を考慮しながら長期間かけて収益確保、投資回収を行うものです。また、事業としては、1~2物件をある特定の時期に始めるのではなく、時間をかけて少しづつ物件を増やし、それらを総合的に管理することによってリスクを分散しているわけです。

ところが、個人のアパート賃貸経営では、対象物件は、現在所有する物件だったり、仮に新たに取得する物件だったとしても現状の収益性のみを考慮した物件だったりすると、立地、集客、賃料水準、空き室リスク等の検討が不十分なため、最終的に収益確保、投資回収ができない場合が出てきます。最悪なのは、不動産を手放しても、借入金を返済できず借金だけ残ってしまうことです。くれぐれも、そうならないように、アパートの建築・改築資金等の投資の回収ができるかどうかを優先してアパート賃貸経営の是非を検討しなければなりません。

現在、日銀の異次元緩和により世の中にお金が溢れている中で、金融機関、建設業者、不動産業者が相続対策として売込みをかけており、容易く借入でアパート建築ができてしまいますので、注意が必要です。
また、業者の中には、全期間借上げ方式の契約を薦める例もありますが、業者のリスクヘッジのため賃料を安く設定したり、空き室がでたらさらに賃料を下げる、入居率減少に応じて賃料を引下げる等の契約条項、見直し条項があるケースが多いので、その際は空き室リスクは個人所有者が負担することになります。
加えて、日本は少子化による人口減で住宅は余ってきますし、地方から都市への人口移動により地方はますます過疎化してきます。東京の一等地は別にして都市近郊でも例外ではありません。空き家、空き室がどんどん増えていく中でのアパート賃貸経営は、ますます難しくなってきます。

以上のことから、アパート賃貸経営は、相続税対策ではなく、純粋に事業として成り立つかどうか十分シュミレーション等により検討を行った上で実行するする必要があると思います。