ロボット・アドバイザー(以下ロボアド)とは、人工知能AIが投資理論に基づき投資配分、投資商品の選択・見直しをアドバイス又はサポートするWEBサービスです。
現状の投資信託でも、地域分散(世界分散)、資産分散、時間分散(積立型)の商品はいろいろあり、自分で調べて投資するのが難しい人々は、投資顧問業者と契約して様々な運用を行う、ラップ口座で株式・債券・投資信託を運用する、投資を専門にするファイナンシャルアドバイザーに相談して投資信託で運用する等の方法を採ってきたものと思われます。そうした中で、最近、安くて、リスクを分散した投資手法としてロボアドが出てきました。
それでは、どのように投資するのでしょうか。投資の手順、態様を見てみましょう。
ロボット・アドバイザーの投資手順
・投資者のリスク許容度を測定する。
・資産配分(安定型、成長型、折衷型ポートフォリオ作成)を行う。
・その資産配分に基づき投資信託、ETF(株価指数連動型投資信託)等を発注又は売却する。
・必要に応じて、積立、再投資、資産配分の見直し(リバランス)、税金最適化等を行う。
・急激な価格の値下りが生じた場合に損失を抑えるため投資信託等を売却する。
・上記の処理をアドバイスする、またはサポートする。
ロボット・アドバイザーの態様
項目 | 内容 |
運営会社 | ベンチャー(創業)、ベンチャー(大手系列)、大手銀行系、証券系、ネット証券系等、様々 |
契約形態 | 投資を一任する契約 推奨する投資信託選択を支援し指示に基づき購入する契約 株式の損切のみを支援する契約 |
投資商品 | 時間分散(毎月積立型・随時積立型) 地域分散(お任せ型、割合指定型) 資産分散 米国ETF(世界分散投資)1種類のみ、数種類のETFをまとめたもの、 ファンド・オブ・ファンズの投資信託(元々のマザーファンドの組合せ) |
リスク許容度の測定 | 年齢、性別、投資経験、収入、資産残高、毎月の積立額、運用目的、損失許容額等により投資のリスクをどこまでとれるか測定する |
資産形成 プラン |
どこでも無料 各人のリスク許容度(複数質問から判定)に応じた資産配分・投資商品を提案 |
投資金額 | 最低投資金額が1万円、10万円、100万円等がある |
投資一任 報酬 |
運用資産×1%程度が多い、一任報酬としては安い (証券会社のラップ口座では2~3%) 固定報酬(資産残高ベース)・成功報酬選択型(例・運用益の5.4%)もある |
購入手数料 | 商品次第で、0、0.2%等がある |
信託報酬 | 0.5%~1%未満、1%前後が多い ファンド・オブ・ファンズの投資信託だと、当該ファンドの信託報酬のほか元々のマザーファンドの信託報酬を支払うことになるほか、投資一任報酬に購入手数料、信託報酬を含めて、購入手数料、信託報酬を別途徴収しない商品もある |
運用 | まだまだ各社のロボアドは運用実績が短い 商品によっては、運用資産残高が極端に低い場合がある 解約があるとファンド自体の運用に支障が出る場合もある |
プランの変更又はリバランス | プランを変更するか、リバランスで投資配分(ポートフォリオ)を変える自動リバランス機能付きのものもある 相場急変時のリスク回避等「運用を丸投げ」出来るものがある 相場急変時のリスク回避だけをサービスとしている商品がある |
解約 | 通常のETFなら上場しているので流動性あり、解約がすぐできる ファンド・オブ・ファンズの投資信託だと、当該ファンドを解約する場合には元々のマザーファンドを解約してから当該ファンドを解約することになるので時間がかかり、流動性が落ちるものがある |
ロボアドは、フィンテック(Fintech:ITを活用した金融、決済、財務サービス)の1つですが、過大な期待を抱くのは危険です。
ロボアドは、
・手数料が、ある程度大きな金額の投資を前提とした従来のラップ口座と比べ、かなり安い
・リスク許容度に応じて資産配分の組み合わせができる、
・積立、再投資、資産配分の見直し(リバランス)、税金最適化等がある、
・相場急変時のリスク回避機能がある、
等の良い面もありますが、
・まだできたばかりで運用実績が乏しい、
・精度を上げるためには、膨大な過去データの蓄積が必要である、
・5年、10年、20年、それ以上の長期にわたる運用が必要である、
・長期にわたる検証が必要である、
等注意すべき点もあります。
安くて、リスクを分散した投資手法は良いのですが、投資が難しくわからないからとの理由だけで投資をするのをお勧めはできません。それぞれ、会社によって商品構成が違うので良し悪しを言えませんが、少なくとも地域・商品それぞれの分散の意味合い、リスクとリターンの関係を十分理解した上で利用すべきではないでしょうか。
投資信託自体の問題としては、
・ファンドオブファンズ(地域・商品の分散のため、投資ファンドの中に他のファンド商品を組み入れているもの)のように間接的に投資をしているもので手数料・信託報酬が2重払いになっている、解約に時間がかかる
・債券投資ではもともとリターンが少ない中で手数料・信託報酬をとられる
・為替ヘッジの手数料が相対的に高い、または為替ヘッジがなく為替変動リスクが高い
・株式中心の投資では手数料・信託報酬は安いがリスクが大きい
・新興国投資で価格変動リスクに加え、為替変動リスクがある
などリスクはいろいろあります。
現段階では
・少額で試してみる、
・参考にしてみる、目安としてみる、
程度が良いのではないかと思います。ロボットという言葉に惑わされず投資の原則に戻って、中身を吟味して分散投資を行うことを考えるべきではないでしょうか。そうすれば、資産運用の考え方が身につく機会ともなります。
なお、参考ですが、クレジットカードのポイントをロボアドの投資運用に充てるサービスを行っている会社(セゾン)もありますので、自己資金を拠出せずに試してみるのも1つの方法です。