日銀の財務悪化に対する懸念

日本経済新聞に先月、今月と連続で日銀の財務状況の悪化の記事が出ていました。
第1は買入れた国債の含み損、第2はその国債の利息収入の悪化です。
原因は共にマイナス金利、金融緩和です。

国債の含み損
含み損は国債の買入れ価格と額面との差で、長期金利の低下により国債価格が上昇し金融機関から買い入れる国債が額面を上回り発生します。満期が来て償還されると額面との差額が実現損となります。日銀は、安倍政権誕生後、黒田総裁が就任し、年間80兆円もの国債を買い集めており国債の残高は2016年度末で400兆円超(国債発行残高の1/3)ですが、その国債の含み損が10月末で9.3兆円にもなっています。2013年年4月末金融緩和開始から約8兆円も増えました。

国債の利息収入の悪化
上記の含み損は、会計上満期が来るまでの期間で分割して計上し、利息収入と相殺後、ネットの損益を計上しますが、分割損失計上額(=利息調整額という)が少なかった金融緩和初期には、利息収支は増加傾向にあったものの徐々に頭打ちとなりその後減少に転じています。今後、利回りの高い国債が償還期を迎え利回りゼロや含み損の国債が増えていくと利息収支はどんどん悪化していきます。2018年には利息収支が赤字になる可能性が高いとの専門家の予想も出ています。(国際基準である企業会計では、時価会計が原則であり、時価のある金融商品は含み損を期末に評価損として計上しなければならないのに、日銀が一括して損失を計上しないのはは不思議でしかありません。)

このように、日銀の財務が悪化すると
国への納付金が減り国の財政悪化に結び付く、
国の支援を受ければ金融政策の独立性が揺らぐ
通貨の信認が揺らぎ円安になる(経済成長に結びつく良い円安ではなく、通貨の信用がなくなる悪い円安、例ブラジル、アルゼンチン)
ことになります。
さらに、こうしたことにより、物価の上昇、インフレ、金利の高騰を招く可能性も否定できません。日銀の国債の価値が減少して含み損が拡大し利息収支も悪化する、金利が高騰すると経済が悪化する、経済が停滞するも物価が上昇するスタグフレーションになる等の負の連鎖が起きるとも限りません。

今まで、マイナス金利を含む量的質的金融緩和のコスト(悪い影響)が隠されていましたが、上記のような兆候を契機にして、アベノミクスの3本の矢(財政政策、金融政策、成長戦略)のうち金融政策の結果を数値で検証する時期に来ていると思います。

 

2016年12月9日 | カテゴリー : 経済 | 投稿者 : ファインRアドバイザー