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個人型確定拠出年金の概要
個人型確定拠出年金の概要は次の通りです。
厚生労働省HPより抜粋し編集
項目 | 企業型確定拠出年金DC | 個人型確定拠出年金IDECO | |
加入者 | DB(確定給付型),DC(確定拠出型)のある会社員 | DC(確定拠出型)のない会社員、自営業者、学生 | |
拠出
|
会社100%(福利費) | 個人100%(手取から拠出) | |
税
|
拠出時 | 非課税 | 非課税 |
運用時 | 非課税 | 非課税 | |
年金受取時 | 雑所得課税(60歳以降) | 雑所得課税(60歳以降) | |
一時金受取時 | 退職所得課税 | 退職所得課税 | |
運用主体 | 個人(投資商品指定) | 個人(運用機関指定) | |
運用機関の選択 | 会社 | 個人 | |
拠出限度額/月 | DC(確定拠出型)のある会社員 55,000円
DB(確定給付型)のある会社員 27,500円 |
DC(確定拠出型)のない会社員 23,000円
自営業者、学生 68,000円 |
|
同上(2017年1月以降の新規対象者) | 専業主婦 23,000円
DC(確定拠出型)のみある会社員 20,000円 DB(確定給付型)のある会社員、公務員等 12,000円 |
メリット
・加入者個人が運用の方法を決めることができる。
・社員の自立意識が高まる。
・経済・投資等への関心が高まる。
・運用が好調であれば年金額が増える。
・年金資産が加入者ごとに管理されるので、各加入者が常に残高を把握できる。
・一定の要件を満たせば、離転職に際して年金資産の持ち運びが可能。
・企業にとっては、掛金の追加負担が生じないので、将来の掛金負担の予測が容易。
・掛金を算定するための複雑な数理計算が不要。
・拠出限度額の範囲で掛金が税控除される。
デメリット
・投資リスクを各加入者が負うことになる。
・老後に受け取る年金額が事前に確定しない。
・運用するために一定の知識が必要。
・運用が不調であれば年金額が減る。
・原則60歳までに途中引き出しができない。(退職金の代わりにはならない)
・勤続期間が3年未満の場合には、資産の持ち運びができない可能性がある。
・加入者ごとに記録の管理が必要になるため、管理コストが高くなりやすい。
2017年1月より、新規対象者に拠出限度額/月として
専業主婦が23,000円 (年間276,000円)
DC(確定拠出型)のみある会社員が20,000円 (年間240,000円)
DB(確定給付型)のある会社員、公務員等が12,000円 (年間144,000円)
追加されます。
拠出時、運用時、受取時にそれぞれ所得税、住民税の優遇措置の対象が拡大されます。とくに、拠出時に拠出限度額以内なら全額を損金に計上できるので拠出額の数十%の所得税・住民税が減少することになります。
個人型確定拠出年金は、個人の財布(手取り)から拠出するので、ちょっとハードルが上がるかも知れませんが、メリットがある制度だと思います。
但し、商品が多様にある金融機関を決定し、かつ運用商品の中から自分の投資方針に沿った商品を選択しなければなりません。DC(確定拠出)年金では、会社が選んだ金融機関(会社の取引先が多い)の商品しか選べず、選択肢が限られていましたが、個人型確定拠出年金IDECOでは、自分で金融機関を選べるので、選択肢は広がりました。その分いろいろな金融機関があるのでどこを選択するか迷うこともあるようです。インターネット、雑誌等で評判の良い会社を選択し、安定運用、積極運用、バランス運用等投資方針を決定の上、自分に合った商品を選択することになります。
仕組み債の構造
仕組み債とは、ある「仕組み」を持った債券のことを言います。
「仕組み」とは、デリバティブ(金融派生商品)を利用し、利子や満期、償還金、通貨などを投資家のニーズに合わせて設定した「仕組み」です。
デリバティブとは、スワップやオプションなどのことを言います。スワップとは、例えば変動金利と固定金利を交換する金利スワップ、ドルを円と交換する通貨スワップなどです。オプションとは、株などをあらかじめ約束した価格で、一か月後、一年後など将来に売ったり買ったりできる権利です。
デリバティブには条件が付与されます。
通貨では「為替相場が一定の幅にある限り」、株価では「日経平均がxx,xxxx円以上である限り」のような条件です。そのような条件のもとに金利が通常より高いなどの仕組みが組成されます。一定の幅を超えた、下限を下回った場合には、利子が出ない・減少する、元金が減少する、償還金の通貨が変わり円建てでの元本割れが生じるなど損失が発生する構造です。
デリバティブには、買手にスワップ料、オプション料等のコストがかかりますが、売手にはオプション料などが収入になります。そこで、通貨、株価などの相場が落ち着いて変動がなければ、売手には手数料が自動的に入ってきますので、これが売手の利益となります。例えば、平たく言うと、金利が通常よりも高い仕組み債は、債券の保有者がデリバティブの売手になっており、オプション料などが金利に上乗せされている債券です。ところが、相場が激しく変動すると上述のように損失が発生する債券でもあります。仕組み債に手を出すと、デリバティブのような難解なものに手を出していないつもりでも実際には手を出しまうことになります。
では、デリバティブの買手は、どのようなポジションなのでしょうか。買手は、通貨、株価などの相場が落ち着いて変動がなければ、コストだけ負担して損をしてしまいます。しかし、仕組み債におけるデリバティブの買手は、大手の取引業者、金融機関、ファンドなどであり、いろいろなデリバティブの売手にもなって買手のコストを相殺【ヘッジ】しかつ利益を出すように行動しています。
仕組み債は、相場が安定していれば、現状からみて損失が発生する可能性が低く、金利が通常よりも高いなどメリットのあるように見える債券ですが、リスクが大きい債券であり、投資する人は、時には大きな損失を被る可能性があることを認識した上で投資し、相場の変動の兆候があった時に直ぐに処分する態勢を取っておく必要があります。
また、仕組み債は、一般的な債券のリスク(①信用リスク②価格変動リスク③為替変動リスク④流動性リスク)のうち④の流動性リスクに特に注意が必要です。
仕組み債は、クローズドエンド型の商品として基本的に中途解約することができない商品もあり、投資に際しては解約の是非、その価格について販売会社に十分確認することをお勧めします。
日銀の財務悪化に対する懸念
日本経済新聞に先月、今月と連続で日銀の財務状況の悪化の記事が出ていました。
第1は買入れた国債の含み損、第2はその国債の利息収入の悪化です。
原因は共にマイナス金利、金融緩和です。
国債の含み損
含み損は国債の買入れ価格と額面との差で、長期金利の低下により国債価格が上昇し金融機関から買い入れる国債が額面を上回り発生します。満期が来て償還されると額面との差額が実現損となります。日銀は、安倍政権誕生後、黒田総裁が就任し、年間80兆円もの国債を買い集めており国債の残高は2016年度末で400兆円超(国債発行残高の1/3)ですが、その国債の含み損が10月末で9.3兆円にもなっています。2013年年4月末金融緩和開始から約8兆円も増えました。
国債の利息収入の悪化
上記の含み損は、会計上満期が来るまでの期間で分割して計上し、利息収入と相殺後、ネットの損益を計上しますが、分割損失計上額(=利息調整額という)が少なかった金融緩和初期には、利息収支は増加傾向にあったものの徐々に頭打ちとなりその後減少に転じています。今後、利回りの高い国債が償還期を迎え利回りゼロや含み損の国債が増えていくと利息収支はどんどん悪化していきます。2018年には利息収支が赤字になる可能性が高いとの専門家の予想も出ています。(国際基準である企業会計では、時価会計が原則であり、時価のある金融商品は含み損を期末に評価損として計上しなければならないのに、日銀が一括して損失を計上しないのはは不思議でしかありません。)
このように、日銀の財務が悪化すると
国への納付金が減り国の財政悪化に結び付く、
国の支援を受ければ金融政策の独立性が揺らぐ
通貨の信認が揺らぎ円安になる(経済成長に結びつく良い円安ではなく、通貨の信用がなくなる悪い円安、例ブラジル、アルゼンチン)
ことになります。
さらに、こうしたことにより、物価の上昇、インフレ、金利の高騰を招く可能性も否定できません。日銀の国債の価値が減少して含み損が拡大し利息収支も悪化する、金利が高騰すると経済が悪化する、経済が停滞するも物価が上昇するスタグフレーションになる等の負の連鎖が起きるとも限りません。
今まで、マイナス金利を含む量的質的金融緩和のコスト(悪い影響)が隠されていましたが、上記のような兆候を契機にして、アベノミクスの3本の矢(財政政策、金融政策、成長戦略)のうち金融政策の結果を数値で検証する時期に来ていると思います。
配偶者控除の改正について
2016年12月8日に決まった2017年度与党税制改正大綱は、2017年の通常国会で税制改正法案として提案される予定とのことですが、その目玉は配偶者控除の見直しです。
配偶者控除とは、一定の年収以下の配偶者(主に専業主婦)には年収がない被扶養者と同様に、扶養者(主に夫)の所得控除を38万円認めるものです。加えて、配偶者特別控除とは、一定の年収を超えると所得税が急激に増加するのを緩和するため、定められた年収までは所得控除を段階的に減らしていくものです。
今回の改正案では、配偶者控除については、年収要件を現在の103万円(配偶者の給与所得控除65万円+基礎控除38万円の合計)から150万円(内訳は不明)まで拡大するほか、配偶者特別控除についても、年収要件を141万円(103万円+38万円の合計)から201万円(150万円+51万円の合計)まで拡大します。一方、扶養者(主に夫)には新たに年収要件を導入し、1120万円以下は従来どうり38万円の控除、それを超えて1220万円まで段階的に控除を減額し、1120万円超になると控除はなくなります。配偶者特別控除も基本的には同様な形をとります。
今回の配偶者控除の見直しは、女性の社会進出を目指す働き方改革の一環の様ですが、2016年9月22日のブログ「扶養控除の改正」でも書いた通り、社会保険の免除となる基準として130万円(一定の条件に該当する場合は106万円)があり、所得税の配偶者控除の基準と整合がとれていないだけでなく、新たに所得税の配偶者控除150万円の基準ができ、より分かり難くなります。
果たして、この配偶者控除の見直しだけで働き方が変わるのでしょうか。欧米の中には、税と社会保険料のを一体として捉え段階的控除の仕組みがある国もあるようなので、日本においても税と社会保険料の負担基準の整合を図ることが求められます。
民事信託の活用の難しさ
信託には、民事信託と商事信託があります。民事信託は、反復継続しない活動が前提の信託であり、個人、NPO法人、社団法人等の法人が受け皿となるものです。一方、商事信託は反復継続して営業活動を担う信託銀行等が行うものです。
信託は、最近、相続等で紹介される事例が増えていますが、まだ信託銀行で一部取扱いがあるものの、一般の人々には広まっているとは言えない状況です。例えば、相続に関連して、信託銀行で扱っている教育資金贈与信託、暦年贈与信託、遺言代行信託は、多様性のある信託スキームのうち信託銀行が得意とする金銭信託機能を中心に、頻度が多いものに特化した限定的な信託です。また、信託銀行で取り扱っている遺言信託は遺言作成・執行の代行サービスで信託法上の信託業務ではありません。
なぜ、信託銀行が一部の信託しか扱っていないのでしょうか。民事信託は信託法で自由度を与えられていますが、商事信託は、消費者等不特定多数の人々と継続的な営業取引をするので、その財産保護が必要との観点から、信託業法で免許を始めとする厳しい規制を課されているためです。
では民事信託では、どのようなことができるのでしょうか。いくつか、相続に関して例を挙げます。
遺言代用信託: 本人が財産を生前に信託の受託者(他の者A)に信託し、信託した後受託者Aが特定の受益者(本人)に信託財産を分配するもので受益者(本人)の死亡を起因として一度のみ、後の受益者(他の者B)を指定することができるものです。受益者は、本人⇒指定された人(他の者B)なります。指定された人は相続人以外も可能ですが、遺留分(相続分の一定割合)を侵害すると遺留分減殺請求(いわゆる返還請求)がなされる可能性があります。(以下に同様)
例えば、子供のいない内縁夫婦の場合、夫が存命中は自分を受益者とし、夫の死亡後には内縁の妻を受益者に指定します。
遺言信託: 本人が「死亡時の財産を信託の受託者(他の者A)に信託すること」を遺言し、本人の死後、受託者Aが特定の受益者(他の者B)に信託財産を分配するものです。受益者は指定された人となります。例えば、本人が遺言で自分の身上介護をしてくれた人、特別に支援したい障害者等を受益者に指定します。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託: 本人が財産を生前に信託の受託者(他の者A)に信託し、信託した後、受託者Aが特定の受益者(本人)に信託財産を分配するものですが、受益者の死亡を起因として連続して受益者を何度も指定(他の者B,C等)することができるものです。受益者は、本人⇒指定された人B⇒指定された人C⇒続く となります。例えば、子供のいない夫婦の場合、夫が自分の死亡後には妻を受益者に指定し、妻の死亡後には妻の遺族ではなく夫の親族を受益者に指定します。
このように相続に信託を使うと、生前に信託する、死後に信託する、生前に財産の分配を受ける、死後に財産の分配を受ける、財産の分配を受ける特定の受益者を一度だけ指定する、または複数回にわたり指定することを選択でき、相続の自由度が高まります。
また、信託は、財産が委託者本人から受託者に移転(名義変更)しますが、信託の目的に従い財産の分配を受ける権利(受益権)は受益者(=委託者本人又はその指定人)に残るという、倒産隔離機能がある財産管理制度なので、倒産、破産等から財産が守られる仕組みががあります。そこで、相続の他、後見制度支援、不動産管理、個人年金信託、事業承継等に利用できる制度です。
今後、民事信託を活用するためには、信託に関する教育も必要ですが、やはり第一に受け皿となるNPO法人、社団法人等の法人を育成すると同時に、規模の大きい信託銀行等に対する信託業法の規制を緩和し、利用者が使いやすい環境を作ることが必要と考えます。
また、税制面では、受益者連続信託は税負担が重くなる、不動産信託の損益通算・純損失の繰越しができない、手続きが煩雑である等のデメリットがあるので、使い易くするため税制面で整備がなされることも重要と考えます。